岡山では数年前に真備町で大きな災害が発生しました。災害が発生すると、ライフラインの復旧まで1週間以上を要するケースがあります。2011年の国民健康・栄養調査によると、非常用食料を用意している世帯の割合は半数以下でした。「災害時に備えた食品ストックガイド」(農林水産省)では、家庭備蓄は「できれば1週間」を推奨しています。慢性疾患を抱えている人などは、欲しい食材が避難所などでは手に入りにくいため、2週間分の備蓄が必要です。
ある避難所で食事状況を調査したところ、多くの避難所では穀類など主食が過剰に供給される一方、乳製品、肉類、野菜などおかずになる食品は不足しているところが多い。災害時の栄養補給は、発災直後は「水」が必要、その後は生き延びるためのエネルギー「主食」が必要です。
しかし、その後は、おにぎりやパン、カップ麺などの主食ばかりでは必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの栄養が不足して、健康を損なってしまいます。さらに1カ月以降の長期化する被災生活では、いかに栄養をとって、健康状態の悪化を防ぐかが大切になってきます。
つまり食料備蓄も単に空腹を満たす主食さえあればいいわけではなく、栄養がとれる備蓄であるおかずが必要となってきます。
さらに温かい食事も欲しくなる。そこで必要となるのが、湯を沸かすためのカセットコンロなどの熱源です。水を入れると蒸気が出て温まる発熱剤と加熱用袋がセットになった食品加熱パックもよいでしょう。
災害時は食欲が落ち、全体の食事量が減ります。食事も必要だが、それ以外に、温かいものを食べて、幸せ感を感じて楽しく食べられるということも必要です。
食事や睡眠がとれないと、疲れがたまったり、細菌やウイルスに抵抗する免疫機能が低下して感染症にかかりやすくなる。また下痢になったり、食事・水分の摂取量が減るために便秘になったりする。水分量の不足は心臓病や脳卒中など循環器疾患のリスクを高め、循環が悪くなることでいわゆるエコノミークラス症候群にもつながりやすくなる。
また血圧・血糖値が短期間で急激に悪化しやすくなる。糖尿病の人は、災害という過度なストレス環境において急激に状態が悪化する。
さらに、長期的にも健康状態の変化が見られる。避難した人の方が肥満者の割合が増えていた。肥満が増える要因として、活動量が低下すること、精神的に落ち込んで引きこもりがちになることなど、以外に食事で肥満をしてしまう。災害時はおにぎりやカップ麺といった炭水化物中心の食事に偏りがちである。だからこそ、災害時でも栄養バランスを考えた食事をとることが重要である。日ごろの食事や生活習慣が非常時こそ表れてしまう。
つまり、災害直後は脱水症や栄養不足による欠乏症に注意してしっかり食べることが重要であるが、食事や栄養が偏ると、ストレスや疲労などにつながるため、入手できるなら野菜や魚介類などのおかずを増やしてたんぱく質やビタミン類も早めに摂取するようにする。食料が十分届くようになったら、血糖値の悪化を招かないよう、食べる量に注意する。
被災地では衛生状態が悪くなりがちで、食中毒も発生しやすい。なるべく手洗い・消毒を徹底する、食べ物に直接触れずに袋を持って食べる、食事を取り置きしないようにしたい。
自分で食事をコントロールし、栄養を改善できる知識とスキルを持つことが重要です。
食品備蓄4点セット
水:飲料水として、1人当たり1日1リットルの水が必要。調理等に使用する水を含めると3リットル程度あると安心だが、水はあるだけあると便利。
カセットコンロ:熱源は食品を温めたり、簡単な調理に必要。(1人、1週間でボンベ6本は必要)
主食:エネルギーの確保。米、レトルトごはん、乾麺、カップ麺、小麦粉、シリアル等、賞味期限に注意。
主菜・副菜:たんぱく質の確保、ビタミン、ミネラル、食物繊維の補充、缶詰、レトルト食品、フリーズドライ食品、乾物、日持ちする野菜等、最近は色々なものが市販されている。
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